痛み

痛みとは、体の異常を脳に知らせる信号です。 脳や脊髄から出て体全体に網の目のように分布している末梢神経うち、痛みを感じる神経の末端が何かの異常により刺激され、これが大脳の中枢に伝えられて起こる感覚です。刺激のもととしては圧迫や索引などの物理的刺激や、薬品その他、各種化学物質などさまざまなもの(心因性)があり、これらが痛みの原因になります。 痛みは、内部から起こることもあります。 体の組織は、負担がかかると疲労します。 組織が疲労すると、代謝や血流の異常をもたらし、乳酸などの疲労物質を生成し、これらが刺激となって痛みを起こします。 さらに、疲労が重なると、骨や関節、あるいは関節包や靭帯などを変性させます。 変性した組織も痛みを起こすもととなり、これがまた疲労を容易にしこうした事を続けていると痛みは難治化するという悪循環を引き起こします。 高齢化社会の到来に伴ない、腰痛、神経痛などの骨や関節などのつらい「痛み」に苦しむ人は、今後ますます増加するとものと心配されます。 特にリウマチや神経痛など難治性疾患の痛みは長く続き、厄介なものです。 これといった治療法もなく、新薬の開発も遅れています。
野球肩、野球肘、テニス肘
野球の投球動作によって,肩関節周辺または肘に痛みと関節の運動障害などが生じたばあいを,それぞれ野球肩,野球肘と総称する。 テニスまたは重労働,家事などによって肘関節,とくに外側に痛みを生じる疾患を総称してテニス肘という。
●野球肩
肩関節を構成する組織に、炎症、小外傷、磨耗が生じておきる。 三角筋や上腕三頭筋の筋炎、および筋付着部炎、上腕二頭筋長頭腱炎、腱板炎、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、肩甲上神経障害、骨端線離解、剥離骨折、骨棘形、,関節遊離体などが含まれる.
共通する症状は肩関節痛で、投球時に強く、安静時にはない。 腱板損傷(断裂など)では、<肩が抜けた><肩がこわれた〉などと訴える。しばしば腕が上がらなくなる。
●野球肘
痛みの部位によって、内側、外側、伸側とに分けられる。 内側の痛みの原因としては、上腕骨内上顆に付着している手関節と指を曲げる筋肉(屈筋)の強い収縮の繰り返しによって、その起始部に炎症や断裂が生じて痛みがおきる上腕骨内上顆炎、内上顆の剥離骨折、成人のばあいの使いすぎによる変形性肘関節症とがある。 外側の痛みの原因としては、年少者でみられる上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎、変形性関節症が、また伸側の痛みの原因としては、上腕三頭筋腱炎、肘頭の剥離骨折と変形性関節症とがある。
症状としては,関節の痛み、とくに投球動作時に痛みが生じ、肘関節の運動障害がおきる。
●テニス肘
日常の外来診療では、テニス肘を上腕骨外上穎炎と同じ疾患として扱う事が多い。 テニスによるばあいは,肘の内側が痛むフォアバンドテニス肘(上腕骨内上顆炎)と、肘の外側が痛むバックハンドテニス肘(上腕骨外上顆炎)とがあり、前者は野球肘の場合と同様、手関節や指の屈筋の炎症、断裂による。 上腕骨内上顆炎はテニス肘の80%以上を占めるものであるが、これはテニスに限らず中高年の重労働者や主婦にもしばしばみられる。 上腕骨外上顆には手関節と指を伸ばす筋肉(伸筋)が付着しているが、テニスのバックハンドや書字の際にはこれらの筋付着部に繰り返しの負荷が加わり、炎症、断裂を生じて痛みを生じる。 症状は、肘の内側または外側に痛みがあり、テニスをしたり、物をもつと痛みが生じる。 肘関節には安静時痛や運動時痛は多くのばあいないが、肘の突出部をおさえると痛い。
五十肩、頚椎症 
五十肩は、加齢にともなう退行性変化を基盤として、40〜50歳代にかけていつとはなしにおこり、肩の痛みと運動障害を生じ、2〜3年で自然に治る疾患で、病名としては<肩関節周囲炎〉と呼ばれる。
頸椎症は、中年以降にみられる頸椎の変形性脊椎症で、椎間板の変性を基盤とし、椎間板狭小化、椎体の骨棘形成(椎体の辺縁にとげ状の骨が増殖すること)が生じた結果おきる。
●五十肩
[病気の特徴〕
肩の回旋を行う筋肉の腱が集まってつくる腱板や、力こぷをつくる上腕二頭筋の腱に退行性の変化が生じることが発病の基盤となる。腱の炎症や肩峰下滑液包の炎症をおこし、ついには癒着性関節包炎を生じる。
[症状〕
徐々におきる肩の痛みで、その程度は、だるい、重いというほどのものから、はげしい痛みのものまでさまざまである。運動は、あらゆる方向に制限されるが、とくに腕を回す、つまり髪を結う、腰の後ろでひもを結ぷ、背中をかくといった動作が困難になり、重症では肩関節はほとんど動かなくなる。
●堕椎症
[病気の特徴〕
中年では約40%の人にみられる。動きのいちばん多い第5〜第6頸椎にもっとも多く、ついで第6〜第7頸稚、第4〜第5頸椎にみられる。頸椎椎体の後ろには脊髄があり、脊髄神経根が稚間孔から斜め前方に向けて走行しているので、骨棘こよりそれぞれが圧迫されると頸稚症性脊髄症、神経根症となる。
[症状〕
項部(首の後ろ)から肩甲部にかけての痛み、頸部の運動制限、運動時痛がある。脊髄や神経根が障害されると、手足のしびれ、知覚障害、筋力低下、膀胱直腸障害を生じる。
椎間板ヘルニア、腰痛症 
脊椎の椎体と椎体のあいだにある腰椎や頸椎の椎問板が、後方に突出または脱出して、その後方にある靱帯や神経根、脊髄を圧迫し、痛みと手足の麻痺をおこす疾患を椎間板ヘルニアという。腰痛があり、椎間板ヘルニアなど,腰痛の原因となるはっきりした疾患がないばあいを腰痛症という。
●椎間板ヘルニア
[病態〕
加齢にもとづく椎間板の変性を背景にして、種々の程度の外カが加わると発症する。重いものをもったり、からだをひねるなどの動作から生じることが多い。椎問板の突出、脱出は前後、左右、上下いずれの方向にもおこるが、力学的にもっとも弱い後側方に多い。椎間板の断裂、膨隆、突出によって、後縦靱帯や線維輪の外層が圧迫されると腰痛や頸部痛を生じ・椎間板の突出度,脱出度が大きいと神経根が圧迫され坐骨神経痛や手足の麻痺を生じる。
[症状〕
外傷など明らかな原因あって発症するものが多いがなかにははっきりした原因がなく、突然または徐々に腰痛、頸部痛が生じる.前屈が制限され痛みは、立ちあがる事ややせき、くしゃみにより増強する。また,坐骨神痛、上肢痛がみられ、下肢を伸展したまま上げていくと神経が伸展されて痛みが増強する特徴がある。多くの例で、足や手の指の筋力低下、知覚鈍麻を生じる。
●腰痛症
[病態〕
筋肉、筋膜の障害によるものがほとんどである.その他姿勢不良による疲労性のもの,椎間関節の障害でおきた痛みに関連するものなどがあり、1つの独立した疾患ではなく、症候群である。
[症状]
症状は,腰痛のみで,下肢の痛みや坐骨神経痛,下肢の麻痺などの症状はない。痛みは腰部とともに殿部にもある.若い人に多く,その経過は短い。
[予防〕
腰痛をおこす疾患全般にわたっていえることだが、日常生活では中腰にならないこと、物をもつときには腰をまっすぐに伸ばして、股関節と膝を曲げてもつようにする。椅子に座るときは、背中を伸ばして深く腰かける。また、腹筋運動を行って筋力強化に努めるのもよい。
変形性関節症
進行性の関節の痛みと、運動障害を生じる関節疾患で慢性関節リウマチなどとちがって炎症によらないものをいう。
[原因と病気の特徴〕
関節軟骨の変性,磨耗による荒廃と関節縁の骨新生、つまり骨が磨耗していく病態と逆に増殖していく病態とが混在する疾患である。
その原因としては、老化現象に関節の使い過ぎなどの影響が加わっておこる一次性のものと、たとえば関節内骨折によって関節面にずれが生じ、関節面どうしがぴったり合わなくなり、だんだんと軟骨がすり減っておこる二次性のものとがある。
膝関節、股関節、足関節、肘関節、指の関節に多い。膝関節のばあいは、O脚の人や肥満の人によくみられる。股関節では、過去に先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全のあった人。股関節周辺を骨折した人に多い。足関節のばあいは,足関節の関節内骨折後に生じるものが多い。
肘関節は、大工や野球のピッチャーなどのように、肘を酷使する人にみられる。指の関節のばあいは、へベルデン結節と呼ばれ中年以降の女性に多い.
[症状〕
関節の痛みは,軽症では,たとえば歩き始め,正座の状態から立ち上がるときなど、関節の動かし始めに生じ、使っているうちに消失する。さらに使っていると、また痛みが生じるという特徴がある。
重症になると、つねに痛み、関節の運動制限がおこり、骨の変形や関節の腫脹(はれ)、関節液貯留(水がたまる状態)などが生じる。
[予防]
下肢の関節のばあいは,体重が重いと関節に負担がかかるので、肥満にならないように注意する。膝関節では、関節の安定性を高めるために、大腿四頭筋(太ももの筋肉)の筋力強化に努める。
関節リウマチ、腱鞘炎 
関節を包む滑膜の炎症ではじまり、症状の悪化と軽減とを繰り返し、軟骨や骨が破壊される非化膿性の多発性の関節炎が慢性関節リウマチである。原因不明の全身性疾患で、男性の0.1%、女性の0.8%にみられる。とくに20〜40歳代の女性に多い。腱を包んで腱の動きを円滑にしている腱鞘に生じた炎症を腱鞘炎という。
●慢性関節リウマチ
[原因〕
病気の本質は不明な点が多いが、主要なものは、遺伝的な素因になんらかの外因が働いて自已免疫異常がおこり、持続することである。免疫異常の引き金を引くのは、たぷん、ウイルスなどの感染であろうとする考えが現在の主流である。
[分類と経過〕
経過により3型に分けられる。
〔臨床的長期寛解型〕
多くは急性に発症する.治療を受けて症状が、消えれば再発のないもので、約10%にみられる。
[間欠的経過型〕
継続的な治療をしなくても症状が自然に軽くなったり、完全におさまることを繰り返す軽症タイプ。15〜20%がこのタイプである。
〔進行型]
患者の多くがこのタイプである。急性の経過をたどるものと,ゆるやかな経過をたどるものとがあるが、終着状態は同じで、軟骨や骨が破壊され機能障害や破壊による変形が強い。
[症状]
関節の痛み,腫脹(はれ),運動制限と朝のこわばりがみられる.痛みは安静時にもあり、とくに朝方に強く天候の影響を受けやすい。病変がすすむと手に種々の変形が生じる。稀ではあるが、肘頭、膝、足関節にかたいしこりがみられることもある。
●腱鞘炎
[原因〕
非特異性(化膿,外傷などのように病態に特異的所見のないもの)、外傷性,化膨性,結核性のものとがあるが、ほとんどは非特異性のもので、腱鞘の滑膜に過剰な摩擦が反復して加わり、炎症が起きる。
[症状]
腱鞘炎は手関節の背側、橈骨茎状突起部、指の中手指節関節部に多く、いずれの場合も痛みや腫脹がみられる。橈骨茎状突起部の腱鞘炎は、ドケルバン病とも呼ばれ、女性に多い。おさえると痛く、物を握る、つまむ、タオルを絞るなどの動作で痛みが増強する。指の腱鞘炎は、ばね指(弾撥指)ともいい指を屈伸させるとばね仕掛けのように動き、<コクンコクン>と音がして指の付け根に痛みが生じる。ひどくなると、曲げた指を自動的に伸ばせなくなる。
肋間神経痛、坐骨神経痛 
胸髄から出て,12対の肋骨に沿って走行する肋間神経が,なんらかの原因によって障害されたために生じる突発性の痛みを肋間神経痛という。一方、大坐骨孔から骨盤の後面に現れ、殿部の後方に回り、後面を下降し足へと分布する坐骨神経カ、その経路で障害され痛みを生じるばあいを坐骨神経痛という。
●肋間神経痛
[分類と原因〕
原因不明の原発性肋間神経痛と,原因の明らかな続発性肋間神経痛とに分けられる。原発生は、心因性の痛みや続発性の痛みを除いたうえで、末梢神経になんらの病変も見出さないものをいう。続発性のばあいは,末梢神経および脊髄の知覚神経の刺激や障害によっておこる.その原因としては,帯状庖疹による神経炎、脊髄腫瘍、黄色靱帯骨化、肋骨骨折、脊椎外傷などがある。
[症状〕
痛みはふつう片側のみで、神経の走行に沿って肋問を帯状に放散するのが特徴であり、かなり耐えがたい。帯状庖疹によるものでは,帯状に湿疹が出る。
●坐骨神経痛
[原因]
原因としては,腰部における種々の疾患があるが、多いのは椎問板ヘルニア,馬尾神腫瘍、脊柱管狭窄症などである。そのほか,脊椎分離症や脊椎すべり症,変形性脊椎症などでおこることもある。
[症状〕
殿部からガ退後面,下腿外側面,足にかけての痛みが特徴である。殿部から下肢にかけての重だるい感じ、圧迫感や放散痛、電撃的な痛みなどさまざまで、原因によって,安静時にも痛みがあるもの、長時間の歩行で生じるものなどがある.神経の走行に沿って,殿部から大腿後面をおさえると痛く、また、膝を伸ばしたまま下肢を持ち上げると痛みが強くなる。しばしば下腿の筋力低下、下腿外側と足の知覚鈍麻をともなう。
色んな種類の痛み止めが開発されています。 それらは主に神経伝達を遮断する薬剤です。 痛み止めとして一番強力なのは、直接痛みを感じる大脳に働くモルヒネです。 最近、話題になっているβーエンドロフィンは、脳内モルヒネと呼ばれホルモンの中でも最強の痛み止め作用を持っているといわれています。
|