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高血圧

高血圧症の大多数は経過が多に変ゆっくりしているので、進行に気が付かない場合が殆どです。 血圧を測って高いといわれたら、もう病です。 高血圧があると、早い遅いの差はありますが、そのうち心臓・血管系・腎臓・脳などが犯されます。 脳卒中の9割以上、中年からの心臓病の多くが高血圧によるものです。 高血圧は夏より寒い冬、暖かいところより寒い地方におおく、寒冷と血圧に密接に関連しています。 
 また、40歳過ぎの人の平均26%に高血圧の症状が見られ、(40歳台 14% 50歳台 27% 60歳台 39%) 年齢が進むにつれその割合が高くなっています。 主な原因は、遺伝・食生活・ストレス・運動不足など生活習慣も誘因となっています。

高血圧とは

 血圧は、心臓から送り出される血液量、即ち心拍出量と、血液が流れる際に生じる末梢(末端)の比較滝小さな動脈(抵抗血管)の抵抗によって調整されており、通常は、収縮期血圧は150mmHg、拡張期血圧は90mmHg未満に調整されている。この範囲を超えて血圧が持続して上昇した場合が高血圧である。このような高血圧の場合は、血圧コントロールを行わないと全身の臓器や組織にさまざまな弊害をもたらす。高血圧症は、原因不明の本態性高血圧症と、原因となる病気がはっきりしている2次性高血圧症とに分けられる。

血圧調整に関与する因子

 血圧を調整する心拍出量と末梢血管抵抗性は、交感神経や、血管の収縮と拡張に関与するホルモンなどの血管作動性物資、さらに循環血流量により規定されている。従って、血圧が上昇して高血圧症が発症する病態には、中枢神経における交感神経の刺激、ホルモンなどの血管収縮因子の過剰な精製と分泌、そして腎臓からのナトリウムや水分の排泄低下による循環血液量の増加が主に関与している。 血圧を下げる薬として、末梢血管を直接拡張する薬ばかりでなく、交感神経の刺激の亢進を抑制する薬、血圧を上昇させるレニンーアンジオテンシン系の働きを遮断する薬、腎臓からのナトリウムや水分の排出を促す利尿剤などがある。

全身への影響

高血圧が持続すると、心筋は肥大する。これは、高血圧という負荷に対して、収縮力を高めて心機能を保持するための適応現象である。 しかし、過剰な負荷となる著しい血圧の上昇が加わると、適応能力が破綻して心不全となる(高血圧性心疾患)。
 一方、高血圧の圧負荷は動脈にも加わり、動脈の組織は障害され、また、肥大を生じて動脈硬化病変を形成する。 そして、血行の力学的な抵抗をもっと受けやすい細小動脈にその病変が早期から進展し、臓器の機能障害をもたらして患者の予後を悪化させる。 特に脳動脈では、細い動脈の壊死にもとづく出血(脳出血)を生じ、また腎臓がでは、糸球体、移入動脈を中心とした硬化病変により、腎臓が萎縮・硬化して機能不全に陥る(腎硬化症)など、重大な合併症を生じる。 眼底の動脈を見ることにより(眼底検査)このような細小動脈の硬化を直接観察することができる。 
上海医科大学で開発されたマイキュレーターは、指先で微小毛細血管を直接観察出来、合併症の予防や動脈硬化の進行度合いを調べるのに、非常に役立ています。 

動脈硬化

            

 

 動脈の内膜、内弾性板、中膜、外膜という、整然とした層構造が乱れて、内弾性板の断裂、内膜の肥厚とコレステロールの沈着を生じた病変を動脈硬化といい、この病変により動脈内腔の狭窄を来たして虚血による障害を起こし、症状の出現したものを動脈硬化賞という。症状は、動脈硬化がどのような血管に起きるかによって異なる。

細小動脈硬化症
 細い動脈に動脈硬化が生きた場合は組織の障害が著しく、小動脈瘤の形成、その破綻による出血が主なり、脳出血の最も多い原因となっている。 腎臓でも細い動脈の硬化により、萎縮と硬化を生じて腎機能の不全にいたる。 細い動脈は血流による力学的な負荷、即ち血圧の影響を最も受けやすいことから、高血圧症が細小動脈硬化の主な原因となり、これらの病気を引き起こす事に大きな役割を果たしている。

粥状動脈硬化症
 比較的太い血管から大動脈に至るまでの病変は、内膜の著しい肥厚と中膜の線維化、そしてコレステロールの沈着が主で、特に動脈内腔に隆起した病変を形成した場合を粥腫(粥状硬化巣またはアテローマ)という、このような動脈硬化性病変は、血管内皮の損傷、血小板の付着と凝集による血栓の形成、種々の増殖因子の分泌、血管平滑筋の増殖、、コレステロールの沈着による泡沫細胞の形成など、いくつかの過程を経て形成されると考えられている。 このような病変の形成を促進させる要因としては、高血圧症、糖尿病、高脂血症、喫煙などが重要である。アテローマによって動脈内腔に狭窄がおこり、血流の循環障害を生じるようになると、臓器の虚血性障害をもたらすことになり、ここで初めて症状が出現するようになる。 冠状動脈の硬化により血流障害をきたすものが、狭心症や心筋梗塞となる虚血性心疾患であり、脳動脈では脳梗塞などの脳循環障害が、末梢動脈では閉塞性動脈硬化疾患が出現する。
 
冠状動脈や腎動脈、末梢動脈では、アテローマで動脈内腔が狭窄された場合、アテローマを機器で直接切除したり、狭窄を押し広げるなどの積極的な治療が広く行われるようになった。 しかし、3分の1程度の症例では、狭窄が3ヶ月以内という短期間で再発する事が問題となっている。 高脂血症をともなった症例では、薬物により血清コレステロール値を200mg/dl以下に厳しくコントロールする事により、少なくともアテローマの進展が抑制できる可能性が報告されている。

高血圧症

●検査と診断

高血圧の診断は、高血圧の程度をつかむとともに、原因と合併症の有無を知るために重要です。そのためにいろいろな検査が行われます。具体的には問診、診察(血圧測定、聴診、打診、触診)、肥満の判定といった一般検査のほかに、尿検査、血液検査、眼底検査、心電図検査、胸部X線検査などが行われます。また、必要に応じて、腎臓の精密検査を行うこともあります。血圧がかなり高かったり、合併症が疑われるときはさらに詳しい検査が行われます。

高血圧の検査ばもちろん血圧測定に始まりますが、健常な人でも温度やストレスなどさまざまな条件で変化します。一日の中でも眠っているときやリラックスしているときは低く、日中活発に行動しているときは高くなるのが普通です。冬は血管が収縮して血圧が高くなりますし、夏は血管が拡張して血圧が低くなります。血圧はストレス、緊張など精神的な影響を受けると変動することはよく知られています。看護婦や医師を見ただけで緊張して血圧が上がること(白衣高血圧)もあります。

血圧を正しく測定するためには、測定する30分前は食事、運動、喫煙などを避け、測定前5分間は安静にしてから上腕で二回以上測定します。その平均をとるのが望ましいとされています。

現在は、健康志向の高まりから家庭用の血圧計が普及しており、誰でも簡単に血圧を測ることができます。ただ、高血圧かどうかの判定は病院で測定した値を基準にします。一般的に、家庭での測定値より病院での測定値のほうが高いようです。病院で高めに出ても、白衣高血圧も考慮したうえで、ほかの検査の結果も鑑み、治療方針が決められます。

●治療の方針

治療の方針を立てる上で最も重要なのは、脳、心臓、腎臓などの臓器障害が起こっているかどうかということ、起こっている場合はどの程度かということです。臓器障害を伴うなど、原因となる病気がある場合(二次性高血圧)は、それが進行しないよう、まずその治療を行います。

高血圧の治療では、症状の度合いによって予後を含めた計画が立てられます。

まず、生活習慣の修正

高血圧治療の基本は、なんといっても生活習慣の修正です。生活習慣の修正が高血圧の予防と治療に大切であることが強調され、これを「一般療法」あるいは「非薬物療法」と呼んでいます。

ここでは中等症以下の高血圧(収縮期血圧180mmHg未満、拡張期血圧110mmHg未満)について考えてみます。血圧がやや高いという以外は、動脈、心臓、腎臓、脳などにもそれほど影響のない段階です。

この段階では一般療法のみで、食生活をはじめとする生活コントロールに指導の主体がおかれ、降圧薬などは使われません。

生活コントロールとは、毎日の食事での食塩やコレステロールのチェック、深夜残業などの抑制、アルコールや喫煙の制限、運動、ストレスの解消などです。患者さんが真面目にこのようなライフスタイルに変え、それを維持していけば、普通は血圧が下がっていきます。しかし、血圧が正常になり安定したといっても、高血圧が完全に改善されたことに.はなりません。油断をすれば、高血圧はぶり返すからです。月に一回は通院することが必要でしょう。

高血圧の治療の目的は、単に血圧を下げることだけではありません。高血圧によって起こる脳卒中、虚血性心臓病(心筋梗塞と狭心症)などを予坊することです!降圧剤の服用により確かに脳卒中は、減らすことは出来ましたが、虚血性心臓病に関しては予測の半分以下の減少しか認められていません。その理由は、動脈硬化が基礎にあつて発症する病気の予防には血圧管理ばかりでなく、合併している頻度が高い動脈硬化の危険因子があるからです。

日本にに比べ動脈硬化の患者が多がアメリカでは、動脈硬化に伴う心臓障害などを防ぐために、高血圧に対してもより厳しい管理をしています。米国高血圧合同委員会(JNC)の第六次報告(1997年)によると、130139/8589mmHgという正常血圧であっても、生活習慣の修正が必要だとしています。

●薬物療法の開始時期

WHO・国際高血圧学会の高血圧症治療ガイドラインによれば、最高血圧が140160mmHg、または最低血圧が90105mmHgで合併症がない場合は、生活習慣の調整を3〜6ヶ月ぐらい続けて経過をみます。そのうえで、なお血圧が一定レベル以上ある人については、血圧降下(降圧)薬を使うことになります。

ただし、一定レベルの血圧とは、WHO/ISOでは150/95mmHg、JSH2000では140/90mmHgとしており、薬の開始基準は各医師によって一律ではありません。また、糖尿病や高脂血症をもつ人、家族に高血圧や心臓・血管系の病気の人が多いなどの危険因子がある場合には、それより低いレベルで降圧薬の適応となります。

●降圧目標

治療によってどこまで下げるのかという降圧目標は、米国高血圧合同委員会第六次報告(JNC-Y)では、年齢にかかわらず140/90mmHg未満としています。ただし、糖尿病や腎障害を伴う場合には、降圧目標を130/85mmHg未満、タンパク尿が一日に1g以上出る場合は、125/75mmHg未満にすべきだとしています。

一般に血圧は低ければ低いほど血管を傷つけることが少なく、動脈硬化も進みにくいのですが、あまりにも低すぎると、脳への血流が不足して脳梗塞を起こしたり、手足の冷えが起こったりします。特に、高齢者の場合は血流不足が起こりやすいので、血圧の調整・管理は慎重に行われなければなりません。

●薬物療法

現在使われている降圧薬の種類と特徴(作用の仕組み)を表に示しました。そのうちどれを最初に使うかは、各医師のそれまでの経験などによって選択がなされます。

現在の降圧薬は6080%の患者さんにはきちんと血圧を下げる作用を発揮しますが、残りの人たちには降圧作用がないか、あっても不十分なことがあります。普通、2週間から1カ月降圧薬を服用して、一つの薬で効果が不十分な場合は量を増やしたり、別の薬に代えたり、作用の違うほかの薬を併用したりします。現在使われている降圧薬は非常に種類が多く、作用の仕組みも多岐にわたっています。高血圧の患者さんの約半分は一つの薬だけで血圧をコントロールすることができます。三剤を併用すれば80%以上、併用の仕方によってはほぼ100%の患者さんの血圧をコントロールできるとまでいわれています。

現在、最も多くの患者さんに使われている降庄薬はカルシウム拮抗薬です。最も古い薬はニフェジピン(商品名・アダラート)ですが、当初は心臓の薬として使用され、即効性の血圧降下作用もあることが分かった薬です。最近は、即効性降圧薬の長期使用は予後が良くないとの問題もあり、ゆっくりと効くカルシウム拮抗薬(アムロジピン)が主役になっています。また、最近最も注目されている降圧薬は、長期予後を改善するという報告があるACE阻害薬です。血圧を下げると、脳血流が低下することも多いのですが、ACE阻害薬は脳では比較的大きな動脈が拡張し、脳血流の低下が起こりにくく、脳には保護的に働きます。すなわち、脳卒中を予防する効果があるということです。

しかし、副作用もあります。1030%の患者さんに空咳という副作用が発現すると報告されています。そこで空咳の副作用がないアンジオテンシンU受容体拮抗薬が開発され、今から13年前に発売されたところです。薬で血圧は正常化されますが、生活コントロールを怠ってはいけません。もちろん、薬を勝手に中止してもいけません。通院して検査をうけ、医師の指示をあおぐことが必要です。