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肝臓病

(1) 肝炎
 肝臓細胞に感染したウイルスなどを生体が異物と認識し、リンパ球がこれを排除しようととする時に起こる免疫応答の結果として肝細胞が壊死する。これを肝炎と言う。アルコールや薬剤によって直接細胞に障害を受けた時も同様である。
 日本における肝炎は大半がウイルス性肝炎で、他はアルコール性肝炎や薬剤性肝炎である。


(2) ウイルス性肝炎
 感染するウイルスの種類によってA型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV)、E型肝炎(HEV)の5種類に分けられるが、D,E型肝炎は日本では患者が殆ど見られない。
 現在、B型肝炎のキャリアーが約200万人、C型肝炎のキャリアーも約200万人存在している。 B型肝炎の場合、急性肝炎から劇症化しやすく、C型肝炎では、それに加え約60%は慢性肝炎から肝硬変や肝臓ガンへと進行する。
 最近では、肝臓ガンの11%がB型肝炎、83%がC型肝炎の感染者である。

(3) 肝炎の症状
@ 急性肝炎
 急性に発病するものである。このうち数%は急激に細胞が死亡する劇症肝炎となる。 肝臓機能低下により強い食欲不振や全身倦怠感、ビリルビンの血中への逆流による黄疸を生じる。 その他頭痛、嘔吐、下痢、全身の痒み、発熱などの症状も出る。

A 慢性肝炎
 慢性肝炎は急激な経過をとらず自覚症状もあまりなく、長期にわたり肝機能障害が認められる。 食欲不振や嘔吐、全身倦怠感、腹部膨満感の他、手掌紅班、くも状血管腫といった症状もあるが、比較的程度は軽い。

4) ウイルス性肝炎の治療


@ B型肝炎
 通常は経過を見ながらの対症療法が行われ、それ以上悪化させないためグリチルリチンを投与したり、小柴胡湯なども使われる。
 活動性のものや慢性肝炎の場合はインターフェロンやステロイド剤が使われる。
A C型肝炎
 C型の慢性肝炎は20〜30年かけて肝硬変、肝臓ガンへ移行する。
 活動性の場合はインターフェロンを、非活動性の場合はグリチルリチンなどを投与する。

(5) アルコール性肝障害
 
我が国では、日本酒に換算して平均3合以上の飲酒を少なくとも5年以上続けた場合を常習飲酒家、5合以上の飲酒を10年以上、あるいはこれに相当する積算酒量を有する場合を大酒家て規定している。
 我が国の診断基準では、脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝線維症、常習飲酒家の慢性肝炎が五大病変となっている。

@ アルコール性脂肪肝
肝臓への脂肪の蓄積は種々の病態により起こるが、アルコールもその大きな要因であり、アルコール性肝障害の初期のものとして知られている。
 アルコール過剰摂取後に肝細胞内に中性脂肪が蓄積され、肝腫大を生じる。この中性脂肪は食事性のもののほか、末梢からの脂肪酸の動員、肝臓での合成が主な由来であるが、エタノール酸化により脂肪酸の酸化が遅れ脂質合成が亢進することが主な要因と考えられている。 
 可逆性の良性の病変であるが、肝硬変の前駆症状として注目されている。

A アルコール性肝炎
 アルコール性肝障害を有する常習飲酒家が大量飲酒を契機に肝機能急性憎悪をきたした病態である。
 肝細胞壊死の機序については、アセトアルデヒドと高分子蛋白の共有結合物やアルコール肝細胞膜抗体が関与しているとの説もある。

B アルコール性肝硬変
 アルコール過剰摂取を15〜20年にわたり続けることにより、肝細胞の変性と壊死、結合組織の再生結節を生じて形成されるものである。

C アルコール性肝線維症
 長期大量飲酒の結果、明らかな炎症細胞浸潤や肝細胞壊死がないにもかかわらず、繊維化が認められるものである。

D 常習飲酒家の慢性肝炎
 常習飲酒家で肝組織上ウイルス性肝炎に一致した所見を有するものである。

(6) 薬剤性肝障害        
 薬剤性肝障害は、その発生機序から薬剤自体あるいはその代謝産物の肝毒性による中毒性肝障害と、それらに対するアレルギー反応により発症する薬剤アレルギー性肝障害に分けられる。

@ 中毒性肝障害
 代表例としてアセトアミノフェン肝障害がある。アセトアミノフェンの中間代謝産物は肝毒性を有するが、微量の場合は通常グルタチオン抱合を受けて解毒される。しかし、薬剤の大量投与によりグルタチオン抱合能を上回る過剰の中間代謝産物が産生された場合や、肝細胞内グルタチオン濃度が低下している場合は、解毒機能の低下により肝細胞壊死が起こる。 常用量である1g程度では肝障害は見られないが、5g以上では肝障害をきたす。
 テトラサイクリン系抗生物質やメソトレキセートの長期投与では脂肪肝を起こす事がある。 性ホルモン剤や蛋白同化ステロイドには中毒性の胆汁うっ滞を起こすものもある。

A 薬剤アレルギー性肝障害
 薬剤アレルギー性肝障害は投与量に関係なく2週から8週の潜伏期後に発症する例が多い。
 好発起因薬剤としては、ハローセン、メチルドパ、フェナセチン、クロルプロマジン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、サルファ剤、インドメタシンなどがある。

(7) 肝硬変
 肝硬変は病理学的には肝実質(肝細胞群)が破壊、炎症、繊維化を来たし、正常な状態とは違った形(再生)になり、やがて、こぶ状(結節)となった虚血状態の肝臓をいう。
 肝小葉が結節化することによって、肝臓内の血流は循環障害を起こす。これにより肝臓内に十分に血液が供給されなくなり肝機能は低下する。
 肝硬変は、ウイルス性肝炎(特にC型)の慢性期から移行してくることが多いが、最近ではアルコール性肝硬変が増加している。 また、慢性の肝内うっ滞から肝硬変に移行していく事もある。

@ 代償性肝硬変
 肝硬変は慢性肝炎からの移行してくる場合が多いが、肝細胞群の破壊が大規模に進んでいなければ、残った肝細胞が代償的に働いており、はっきりした自覚症状を訴える事は少ない。 このような状態を代償性肝硬変と呼んでいる。
 食欲不振、腹部膨満感、悪心、嘔吐を訴え、発熱することもある。

A 非代償性肝硬変
 代償性肝硬変から悪化した状態で、黄疸がはっきりしてくる。また、肝不全となり、解毒機能の破綻によってアンモニアが脳内に流入し肝性脳症を来す。 肝性脳症は、軽度の意識障害、性格変化から深昏睡にいたる肝性昏睡を来す。

B 肝硬変の予後
 繊維化の進展に伴ない、肝内血管が圧迫され、門脈圧が亢進する。 同時にアルブミンの減少により血液中から漏れ出てくる水分や、肝臓からのリンパ液流出障害により腹水が出現する。
 門脈圧亢進によって、肝臓内に流入しにくくなった血液は、側副血行路を求めて胃・食道・脾・腎・腹壁系静脈へと流れ込んでいく。 その結果、食道静脈瘤などが形成され、それが破壊されると致命的な大出血を来たすことがある。
 肝硬変の進展により、肝不全、食道静脈瘤破裂、肝ガンとなることが多く、予後は不良である。


C 肝硬変の診断
 肝機能障害により、赤血球、白血球、血小板の全てが減少し、総ビリルビンは上昇する。 GOT,GPT,アルブミン、コリンエステラーゼは低下していく。
 肝硬変の診断には、腹腔鏡や腹部エコーが積極的に使われる。

D 肝硬変の治療
 アルコール性肝硬変など原因がはっきりしている場合には、禁酒などの原因除去を行う。 代償期には肝臓への血液供給と肝臓の負担軽減を目的として高蛋白、高カロリー、高ビタミンの食事療法、食後1時間の安静、十分な睡眠が指示される。
 非代償期には出現する症状に応じた治療を行う。    

       

(8) 肝ガン

@ 肝臓ガン
 肝ガンとは一般的に肝内細胞由来の悪性腫瘍、原発性肝ガンを意味する、 胃や肺などから転移してきたガンは転移性肝ガンという。
 原発性肝ガンは肝細胞ガン胆管細胞ガンとに分けられるが、肝細胞ガンが90%を占める。 肝ガンは徐々に進行するため、初期は殆ど無症状である。 初発症状としては全身倦怠感が約60%の症例に、腹痛、腹部膨満感、食欲不振約40%の症例に見られる。 しかし、この症状は、合併する肝硬変の症状と区別するのは困難である。 胆道圧迫、胆管内浸潤による黄疸や、肝ガンの腹腔内破裂によって腹水に血液が混じる血性腹水のみる。
 肝ガンは肺、副腎、腹膜に転移しやすい。
 早期発見には、慢性肝疾患患者のAFP(アルファフェトプロティン)値や超音波検査などを定期的に行う事が必要である。
A 肝臓ガンの治療
 肝臓がん治療の選択基準には、ガンの「発育段階」「進展度」存在部位」と言う因子があり、患者が持つ「慢性肝障害」「合併症」の因子も判断しなければなりません。 各病院の「得意とする治療法」も判断基準の一つです。
 1、  肝切除
 2、  動脈塞栓療法
 3、  腫瘍穿刺療法
 が3本柱。 肝切除は肝機能が良くないとだめで、腫瘍の進展が高度になると切除し切れません。塞栓療法は肝機能や腫瘍の程度にかかわらず、ある程度広範囲の患者さんを対象に出来、6割の人に選択されています。 穿刺療法は一番楽な治療法で、早期発見で進展度が軽ければ対象に出来ます。 さまざまな新しい治療法が開発されていますが、自分にあった治療法を医師と相談し、決定する事です。 一度治療したら終わりではなく、その後の定期的観察が重要です。

 

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